月見草平・著、裕龍ながれ・イラスト、MF文庫J。
9月3日(日)、読了。
これは、非常に期待できるシリーズになってきましたね。正直、カルナも好きでしたがそれよりもスラップスティックにし易い上にオイシイキャラが多いので次が楽しみと思います。
今回は、眼鏡娘であり、その持つ雰囲気から『委員長』と呼ばれる一度も委員長はしたことはない田中智子の自覚症状のないオカルト疾患を扱った物語と、吸血鬼を上手く作品世界にマッチする形でオカルト疾患として成立させて泣ける話にしつつ、先に続く伏線を提示する中編二作構成でした。
『恋のインフルエンザ』は突発的に発生した朝永と委員長のデートを前作で朝永に救われて同じ高校に転入してきた毬菜が仰々しく尾行するのにきらほが巻き込まれる御華詩。その中で、朝永と中学時代から付き合いのあるというか中学時代に不良に絡まれたところを助けられたことがある割に前作で朝永をよく思わないようなことを言っていた理由が語られたりするのですが…… うん、委員長、アンタはポリシーのある眼鏡娘だ。疑いよう無く。これは、眼鏡的にもよい御華詩でした。まぁ、そことの対比できらほの朝永への思いが明確になる兆しが見えるわけで、その辺の伏線の使い方は綺麗です。っていうか、委員長鋭い。これで今後も話に絡んでくるからこのシリーズは安泰です。智子で委員長は違う人思い出したりしますがそれは偶然だと思います。
『吸血鬼の治し方』は吸血鬼をオカルト疾患として定義して、それに幼くして罹患した為に両親に施設に預けられた少女の御華詩。子供嫌いの朝永と、その冷たさに反発するきらほの対比とか、それでいて助手というか看護師としてと理由付けつつもきらほを心配する朝永の優しい一面が出てきたり、朝永の師匠が登場したり、関連施設が出たり、本当にこれから先の展開を示す御華詩でもありました。これを読む限り、次以降も期待できます。
とまぁ、なんだかんだ言って、第1回受賞作家の中で唯一シリーズを円満解決させて次シリーズに入っただけのことはある安定感のある物語でした。
……同じ第1回受賞作のゴーレム×ガールズの次はいつになるんだろう…点
さて、では次は『 “文学少女”と飢え渇く幽霊(ゴースト) 』です。これも期待のシリーズなので楽しみ。