野村美月・著、竹岡美穂・イラスト、ファミ通文庫。
5月8日(火)、読了。
いやぁ、よかった。ええ作品でした。読み終わって先ずは、もう素直な感想を述べたい、そんな心境です。
陳腐な言葉ですが便利な言葉です。でも、読んだ後にこれだけ色々なモノが残る作品は辺に飾るのも無粋にして『ええ作品』と抽象的に述べることこそ粋とも思えます。

はてさて、今回もいつものごとく見立てがありますがやはりネタばれるので伏せておきます。
そんな今回のメインヒロインは心葉君に思いを寄せる琴吹ななせ。彼女の親友であり、音大附属高校で声楽を学ぶ少女を巡る物語。歌やってる人間なんで今までよりも感情移入度高い分、色々と来るモノがありました。なんか、最後の方は痛ましくて痛ましくて、でも、決してそれだけではないことが解って。そうしていつものごとく物語を読み解く”文学少女”天野遠子先輩はやっぱり愛すべきキャラですねぇ。
一方で、心葉は今回の事件に関わるとある人物の中にかつての自分を見つけつつ、少しずつ少しずつ自分の避けてきた過去と向き合います。そんな彼が最後に見いだした素朴なモノには、胸打たれるモノがありました。
決して甘いだけではない。渋み辛みがあるからこそ人間は素晴らしい。文学を味で表する遠子先輩は、その実、様々な人生を味わっているのかもしれない。そんなことを思ったりもしました。うん、本当に、人間ってどこまで行っても人間なのですね。

そして、次の巻では遂にその過去の最大の象徴と向き合うことになりそうです。そうなると、次も出来る限り速攻読破を目指します。

とまぁ、そんなところで次は『刀語 第五話 賊刀・鎧』です。