浅井ラボ、あざの耕平、神野オキナ、三田誠・著、山本ヤマト、 okama 、椋本夏寄る、狐印、凪良・イラスト、GA 文庫。
8月25日(土)読了。
今回は、ポリフォニカ世界を使ったアンソロー短編集でした。どれも、本編とは違った切り口でポリフォニカ世界の懐の広さを改めて実感させられました。
『たとえ時が経とうとも』(三田誠)
仕事のトラブルで謹慎中のレンバルトが場末の酒場で出会った老ピアニストとの交流を描いた物語。
普段、他のキャラに焦点が当たってぼやけ気味の天才的な能力を持つモノの身近に本物がいるために自分を『天才の紛い物』と称するレンバルトの内面がよく出た渋い作品でした。雰囲気的にはクリムゾンよりブラックのが近い感じですが、そういうのの方がレンバルトには似合うのかもしれませんね。
『音色は遠く、耳に届かず』(浅井ラボ)
殺し屋を生業とする裏稼業の神曲楽士視点で描かれる一風変わった作品。正直、描写的にはえぐいモノがあったりしますが、何かが欠落した主人公の視点が面白い。最後の方の決着の仕方も予想はついてましたが実際にやられて、その上で結果について特に感慨を抱かない辺り、非常に歪んだ人格を素直に描いた作品でした。他で描かれない視点だけに新鮮ですな。
『ワイルドウェスト・いえろー』(神野オキナ)
ずるい。これはずるすぎます。既に白でこの可能性は肯定されているだけに、余計ずるい。
ぶっちゃけ、ポリフォニカ世界に某ネコミミ宇宙人が出てきたりする著者の他社作品の登場人物が紛れ込む御華詩。いや、これが通る時点で懐広いどころじゃないですね、ポリフォニカ世界って(;^^)
『ダン・サリエルと白銀の虎』(あざの耕平)
個人的に今アンソロジー中で最も気に入った作品。
世を風靡する若手天才音楽家にして神曲楽士、ダン・サリエルが白銀の虎の姿を取る上級精霊を気に入って契約を結ぼうとするが彼は既に心に決めた神曲楽士がいるようで…… という御華詩。
ダン・サリエルは軽い、大衆受けする音楽で一斉を風靡していて、一見表層的な音楽を売っているかと思えば、実は古風な格式ばかりを重んじて高尚なモノとして金持ちが音楽を独占することに憤りを覚えるからこそ真逆の道を選んだ純粋に音楽を愛する心の持ち主で、傲岸不遜な物言いなんだけれど、憎めない、そんな素敵キャラです。つか、その音楽に対する考え方には心底共感しました。そうですよね、格式高いホールで行う、S席のチケットが10万とかする音楽も、道ばたでストリートミュージシャンがギター片手にかき鳴らす音楽も、本質は同じ。それを如何に楽しむか? それだけしかありません。楽しめれば、どっちも同じだけの価値を本来は持つモノです。そういう部分を皮肉ったキャラとも言えます、ダン・サリエルって人物は。彼の活躍を普通に長編で読んでみたいとまで思うぐらい気に入ってしまいましたが、望み薄ですかねぇ。
とまぁ、そんなところで次は『灼眼のシャナXV』です。