田尾典丈・著、有河サトル・イラスト、ファミ通文庫。
1月31日(日)読了。

ギャルゲー『エターナル・イノセンス』の世界を現実に投影し、その主人公の立場を手に入れた都築武紀。
様々な事件を乗り越え、彼は、既に現実の存在となったヒロイン達の幸せを願って自分に出来ることを考え始めていた。
辛いこともヒロイン達のためと思えば満たされる日々を送っていたのも束の間、ある日目覚めると、世界が変わっていた。
そのとき、ヒロイン達の隣には……

ギャルゲーの世界を現実に投影すると、何が起こるのか? そんな if を一つ一つ積み上げていくシリーズ第4弾。

これまでで積み上げられたメタな存在が更に踏み込んできて、武紀が迎える危機。この構図は来るべきときが来た、という風情ですな。前巻で、虚構と現実の対立構成はメタな存在から『仕組まれた現実』としての構図に落とし込まれていましたが、その先に至る前哨戦のような意味合いですかねぇ。確かに、自分自身を主人公の立場に投影した以上、乗り越えなければいけない問題でしたしね。

あと、毎度のことですが、この作品を読んでいると色々と既存のゲームのことを思い出します。というか『 Kanon 』ですが。主人公と結ばれなかったヒロインの運命ってどうなるんだろうなぁ、とか、そんな思考実験。で、その運命を《遡って》救おうとするのが、この物語の武紀の行動原理ってことでしょうか? 用語的にはハーレムエンドになるんでしょう。が、そんな生やさしいモノでもなくて。『卒業~Graduation~』だと『人間失格』と言われてしまう、そんなルートを自分の手に入れた現実の中で虚構に縛られながらもどうにか切り開こうとする御華詩。今回でそんな方向にまとまった気もしますね。

また、作中現実が虚構とマージされたことで、高橋さんが巻を重ねる事に活発に動き出したのも良いですねぇ。魔術サイドになると出てこれないとある科学の人みたいなことはもう無いでしょう。『現実のヒロイン』という、当たり前の存在なのにこの作品内では特異点とも言える彼女がどう絡んでくるかも興味深いところです。

何はともあれ、4巻発売おめでとうございます。そして1周年ですね。

てなところで次は『純愛をさがせ!3』ですな。

ギャルゲヱの世界よ、ようこそ! disc4 (ファミ通文庫)

田尾 典丈
出版社:エンターブレイン
発売日: 2010-01-30