大泉貴・著、しばの番茶・イラスト、このライトノベル文庫がすごい!文庫。
9月29日(水)読了。
第一回このライトノベル文庫がすごい!大賞大賞受賞作。

言葉が命の源となる。
言葉で子孫を増やしていく。
そんなコトモノが公になって30年足らずで、世界の有り様は変わっていた。
コトモノは、コトモノの言葉が紡ぎ出す『物語』の中を生きる。
ロゴは、そんなコトモノの『物語』を記述する能力を持ってきた。
最初は、同じ施設の少女のために。
それからは、仕事として。
だが、突如『物語』を破壊する存在が現れて……

うむ、口絵部分の引用だけで引き込まれる世界観でした。
『言葉』が産み出す『コトモノ』。
彼ら彼女らの間でだけ通じる認識の在り方。
脳内の『物語』に応じて、様々に行われる外形化。
また、別のコトモノに対して影響力を持つメタコト。
読んでて、ゾクゾクしますねぇ。
全体を通して、認識やら言語を扱うフランス現代哲学を髣髴としました。
クラクラと酩酊するように、楽しめる御華詩でした。
この世界観は様々な可能性を秘めています。
そこが、大賞の理由でしょうねぇ。
正直、この厚目の一冊で、ようやく世界観の一端が形成されたとも言える内容でしたし。

ただ、こういう概念的な部分を楽しむタイプの作品、私は大好物なんですが一般的なライトノベル読者層にはどうなんだろう? というのはあります。恐らく、拒否反応示す人も少なくないでしょうね。とは言え、このラノ文庫は可成りの販路を持っているようで、駅売店やらコンビニでも置いていたりします。そこで、普段ラノベを読まない層に読まれると、また評価も違うんじゃないかなぁ、と思います。特にSF読者とは意外に相性がいいかもしれませんね。そんな、戦略性も感じさせる作品でした。でもまぁ、そうなると、正直、ハードな路線でギャグパートとかは全部排除した方がよかったようにも思います。

とまぁ、一冊読みきって『ようやっと始まった』と感じる作品だったので、次に大きく期待します。

てなところで、次は『僕たちは監視されている』です。

ランジーン×コード (このライトノベルがすごい!文庫)

大泉 貴
出版社:宝島社
発売日: 2010-09-10