里田和登・著、国道12号茶・イラスト、このライトノベル文庫がすごい!文庫。
10月3日(日)読了。
第一回このライトノベル文庫がすごい!大賞金賞受賞作。
IPI症候群《クローラ》。
その俗称は情報収集プログラムに由来する、情報社会の弊害。
秘密に飢え、秘密を知ることに拘泥してしまう病。
時にそれは暴力や自傷を伴い、患者の死さえも珍しくはない。
そんな秘密に飢えた患者のために、国家的に自らの生活を動画配信する職業があった。
IPI配信者《コンテンツ》と呼ばれる人間は、公開レベルを設定して患者へと自らの私生活を晒していた。
そうすることで、コンテンツの秘密を臭わせ患者の秘密を求める欲求を満たすのだ。
これは、そんなコンテンツの少年少女の物語……
これは面白い。
ネット社会の負の面を上手く利用して、正に向けてたり。情報依存を病として捉えた『クローラ』の概念が妙にリアリティがあって、その治療法としての『コンテンツ』の設定も理に適っています。そんな、架空の社会問題をテーマにしながらも、終始少年少女の物語になっているのがよい。少年少女達の人間関係の中でも『秘密』をキーワードに、綺麗に伏線がまとまっているのもいいですな。中盤以降、一つの大きな秘密が明かされてからの展開が気持ちいいですねぇ。よかった部分を書くとネタばれるので書けないのがもどかしいですが、非常に読後感のよい作品でした。
てなところで次は『伝説兄妹』です。