貴志祐介・著、文春文庫。
12月11日(火)読了。
解りやすい授業で生徒の人気も高く、他の教師陣からの信頼も厚い。
そんな英語教師、蓮実聖司。
彼は、生きている。
周囲の状況を過ごしやすい状況に整えながら。
そのために、ちょっとばかり、人より選択肢が広い手段を用いながら……
映画館で予告を何度も観る間に気になって、こういうのは映画より前に原作を読んでおくべきだろうと思って手に取った作品。正直、予告を観なければ手に取らなかったとはいえ、予告を観ずにまっさらな状態で読みたかったとも思う内容でありますな。
この、蓮実聖司という人物の在り方は、非常に興味深い。きわめて論理的で、感情移入しやすいキャラと言えなくもない。色々と酷い話ではあるのですが、彼の視点で描かれた部分を読んでいる間に、何かしら倒錯めいた共感を覚えるような、そんな感覚。そしてこれは、ある意味、彼の何気ない日常を描いた作品、と言えるのかも知れません。そう、彼にとっては、当たり前の行動しか取っていない。その選択にブレはない……なんというか、もう、物語云々というより、緻密に描かれた蓮実聖司というキャラそのものが、全てでありますな。
できるだけネタバレを避けつつ、抽象的にしましたが、何はともあれ、酩酊したように存分にエンターテインメントとして楽しませて貰いました。
てなところで、次は『俺はまだ恋に落ちていない4』です。