野村美月・著、竹岡美穂・イラスト、ファミ通文庫。
9月5日(火)、読了。
これは久々に心に残る良作でした。
前作と同様、とある文学作品を下敷きにしたストーリーです。まぁ今回のモチーフの作品名を出すとその作品を知っている人にネタバレしてしまうので避けますが、その辺の使い方が非常に上手いのです。
今回の物語の登場人物達も、前作とはまた異質な重たいモノを背負っています。それも、生々しく壮絶なモノを。”文学少女”らしく上述のモチーフの作品に言及しながら作中登場人物とモチーフの登場人物が合わさって絡み合っていく部分は綺麗にパズルのピースが嵌っていってゾクゾクします。こういうの大好きです。
表現がややこしいのですが、作中で『主要登場人物が織りなす物語の読者』としての文芸部部長の天野遠子と井上心葉の在り方も興味深いモノがあります。彼女と彼は自覚的に読者たろうとします。そして、読者であるからこそ見えるモノをその登場人物達に告げることになります。この辺の構図もよいですね。それでいて、心葉がその登場人物に共感しつつ、その物語と自分の過去を見比べたり、彼の心の動きを描く上でも効果的です。
そんな訳で、このシリーズは注目度上位に上げて、今後も出たら速攻読破で行きたいと思います。
さてでは、次は『アストロ!乙女塾!星のプリンキピア(下)』です。