野村美月・著、竹岡美穂・イラスト、ファミ通文庫。
9月4日(火)、読了。
冬。
遠子先輩の大学入試も近づき、文芸部室で遠子先輩のおやつを書いて過ごす日々も残り少なくなった頃。
心葉は遂に、その最大の過去の瑕と向き合う。
少し前から仄めかされた、あの少女が登場し、様々な思いが絡み合い、残酷な物語が展開する。
その物語を、”文学少女”天野遠子はどう読み解くのか……

いや、もう本当にこのシリーズは素晴らしいですねぇ。今回もネタバレを避けて見立てとか語らないようにしますが、多分このシリーズは内容的には重たい部類だと思います。
登場人物達の多くが、深い心の傷を背負っています。
今回は特に、これまでも再三描かれてきた、心葉のトラウマが描かれます。
そして突きつけられる、彼の想いと現実のギャップ。それを取り巻く人間の思惑。
心の傷から決して目をそらさず、むしろ抉るような物語。そう、抉り、膿を出さなければ、癒えない傷もあります。生きるとは、結局そういうことなのかもしれません。
正直、相当残酷な御華詩と言ってもよいでしょう。そこには生々しい少年少女の想いが描かれています。絵空事ではなく、身近な問題の積み重ねとして起こりうる、苛酷な人間模様。
それでいて、最後の最後、”文学少女”に読み解かれたとき、絶望の中に一滴の希望を見いだすことが出来ます。人間は、強くもないけれど、そんなに弱くもないのですね。

そして、次はいよいよこの作品中の異端。本を食べる”文学少女”という妖怪、天野遠子先輩の御華詩となるのでしょう。
彼女だけは、「本を食べる」という明確な人外性を発揮しています。その意味は? 今巻末の意味深な言葉とも合わさって気になって仕方がありません。また次も出たら速攻で読む所存。

とまぁ、そんなところで次は気軽に読める『リミットレス3』です。