田尾典丈・著、有河サトル・イラスト、ファミ通文庫。
6月5日(金)読了。
ギャルゲヱの世界をこの現実に呼び出してしまうという奇跡。
その中心に居た都筑武紀は、ある日の学校帰りに一人の少女に声を掛けられる。
隣に住む理恵と似た声のその少女は、何と小学校の頃に転校によって離ればなれになってしまった幼馴染みだった。
しかしその再会は、ヒロイン達との日々に亀裂を生じさせることとなる。
時を同じくして公園に現れた巨大な木。
恋愛成就などの御利益が囁かれているが、その設定は多くのゲームで似たような設定が語られるモノだ。
何のゲームか判然としないまま、彼は再び別の奇跡に巻き込まれて……
『ギャルゲヱの世界よ、ようこそ!』第二弾登場。
虚構と現実の交錯によって生じる軋轢などが描かれるのが魅力の作品ですが、今回は前回より更に踏み込んだ内容となっておりますな。今回は武紀では無い誰かが起こした奇跡。複数のゲームの設定が同じ舞台に登場すると、どうなるのか? そんなことが描かれています。
全体的には確信犯的に積み上げたフラグを回収したり回収できなかったりと言った構成になっていてシステマチックなのは前作同様です。ただ、ギャルゲー的な思考を逆手に取って事件に結びつけていく手法は前作では飛び道具的なモノになっていましたが、その辺りが今回は普通にノベルゲームのフラグ獲得とイベントの関係性になっているように感じました。少し大人しくなってしまった感は否めませんが、シリーズとして世界観を引き継ぐ落としどころとしては妥当とも言えましょう。少なくとも、今回で全体の世界観が確立されたので色々と話を膨らませる自由度が出てきたように思います。
それでもやっぱり、作中ゲームの内容が登場人物たちのさらっとした説明だけなのが微妙なところでした。もう少し作中ゲームのシーン再現があった方が個人的には感情移入できたようにも思います。これは本当に個人的嗜好ですし、多分、そういう路線は敢えて作中ゲーム話は飽くまで非現実であることを強調する意味で避けてるところもあるんでしょうが(;^^) 作中作は読者の視点では容易に作中現実と混同してしまいますしね。
こんなことを考えていると、ふと『虚無への供物』とか『匣の中の失楽』とかを思い出しました。そういえば、これをギャルゲーでやるとこんな感じになるのかもしれないなぁ、と思ったり。
何はともあれ、第二巻発売おめでとうございますなのです。
とまぁ、そんなところで次は『神曲奏界ポリフォニカ レオン・ザ・レザレクター4』です。