九條斥・著、えむけー・イラスト、MF文庫J。
11月30日(金)読了。
第八回MF文庫Jライトノベル新人賞審査員特別賞受賞作。
少女は、勇者だった。
二年前にこの世界に降臨し、人々を脅かす魔王を倒すべく準備を進めてきた。
そうして、遂に初陣に出る。
だが、魔王軍の指揮官の前に、いきなり迫る窮地。
その場を、謎の少年によって救われる。
仲間など必要ない、むしろ足でまといだと思っていた少女勇者。
しかし、その少年、アルの腕を見込み、共に魔王を倒す旅に。
その旅の中、少女勇者は少年に惹かれ、そして、真実を知る……
昨今再発見されたようでよく扱われる魔王と勇者というモチーフの中、少女勇者と少年との恋とバトルが淡々と語られる物語……ふむ、なんだか翻訳もののような端的な文体で全体に漂う雰囲気は懐かしいのですが、翻って新しい、そんな感じですかねぇ。もしくは、歴史は繰り返す。
全体として、本当、淡々としていて、少女勇者とアルの物語は盛り上がらない。ただ、それが義務を果たすことだけに終始する在り方と、その二人が惹かれ合って、という人間味の対比。ただ、それだけ。まだ、動機になる以前、といった感じでしょうか。
だからこそ、アンジュさんがいい。勇者でなくとも、世界に生きる者として、できることをやる。そして、勇者も同じ人間として、共に在ろうとする。そういう意味では本当、アンジュさんは素晴らしいキャラですな。若くして都市長でありおちゃらけているようできっちり責任は果たして、何より眼鏡を掛けている。彼女の存在があるだけで、ずっと物語は深みと旨みを増したように思います……が、だからこそ、うん、なんというか……
あと、このタイトルが激しくネタバレで勿体ない気がしないでもない。というか、このタイトルにしたからには、ある程度巻数を重ねてその分を取り戻さないと、と思ったりも。そんな感じで、一冊使って「ようやく始まった」という感じなので次に期待。
何はともあれ、デビューおめでとうございます。
てなところで次は『眠らない魔王とクロノのセカイ3』です。