遊歩新夢・著、DSマイル・イラスト、オーバーラップ文庫。
12月31日(火)読了。
オーバーラップ文庫キックオフ賞金賞受賞作。
音大に進学したものの、自分の求めるものがそこになく腐っていたユーフォニアム奏者、摩周英司。彼は、師の紹介で近隣の女子中学生の面倒を見ることになる。
少女達は、日本では余り馴染みのないブリティッシュ・カルテットの編成で、主流から外れるために吹奏楽部を追い出されたのだという。
英司は、彼女達が奏でる音に求める『音楽』を見出し、彼女達を全力で育てることを決意して……
ジャンルは違えど、アマチュアながら20年以上合唱の世界に身を置き、これからも置いていく身として、非常に共感できる部分の多い作品でありました。作中でも言及がありますが、特に呼吸を扱う吹奏楽と声楽、合唱は通じるものも多々あるのです。読んでたホテルの部屋で思わず作中に登場したオペラの曲を歌いそうになったのはご愛敬。
また、私自身、学生時代にプロの指導をそれなりに受けたアマチュア合唱指揮者でもありますが、本番前に団員に掛ける言葉も大体同じようなことなので、僭越ながら遊歩氏は似たようなスタンスで音楽されてるのかなぁ、と、演奏する視点だけでなく演奏させる側の視点にも共感を感じたり。やっぱり、ステージってものは「楽しんでなんぼ」ですからねぇ。
これは、ある程度音楽業界に馴染みのある人間の感想ではありますが、そういう人達には何かしら感じるところのある作品であるのではと思います。まぁ、だからこそ、そういうネタをやってみようと思っていた作家志望の方にとっては「やられた!」と思う作品かもしれませんが。なんでも、同じ賞にかなり薄めながら合唱ネタを含む作品を送って落選した人がいるとかいないとか。
ただ、どうでもいいですが、彼女達に掛ける賛辞は『ブラボー』は男性形なので『ブラーバ』(女性形)か複数形の『ブラーヴェ』(女性複数形)だとかそんなツッコミをうちの師匠がよくしてたので、どうしても女性に対して『ブラボー』って言ってるの聞くとそれを思い出してしまって妙に気になったという(;^^) まぁ、元の言葉関係なく『ブラボー』自体が日本語の慣用表現ですから、やっぱりどうでもいいといえばどうでもいいのですが。
そんなところで次は劇場で観るまでに読んでおこうと『エンダーのゲーム』。最近出た新訳ではなく、神田で発掘した旧訳です。