野村美月・著、竹岡美穂・イラスト、ファミ通文庫。
9月2日(火)読了。
すみれのような笑顔の先輩だった。
困ったとき、苦しいとき、蹲る僕の手をそっと握って立たせてくれた。
数々の物語を読み解いて、その闇を優しく照らす光を見いだしてくれた。
そんな”文学少女”とその作家の御華詩……
素敵な御華詩でした。
この作品と出会えて本当によかったと思える、そんな作品でした。
遂に完結して嬉しくもあり寂しくもあります。
今は、この天から降り注ぐマナのように甘く優しい余韻に浸っていたい、そんな気分です。
決して気楽に読める作品とは言い難い、でも、その重苦しく陰惨な中にも必ず暖かなモノを残してくれる、そんな”文学少女”の在り方。それは又『見立て』を美事に用いた良質のミステリとしての側面も示します。
物語を様々な視点から深い奥まで見通し、登場人物の心情を読み解く。その時、すみれ色のリボンのセーラー服に長い三つ編みを揺らす”文学少女”は、鼻緒だけが赤い黒ずくめの拝み屋のようでもあります。そうして彼女が告げるのは、一見残酷な運命の中に秘められた優しさや思いやり、愛情といった暖かな感情を浮き彫りにし、事件の当事者達を絶望から救う福音。
なんと残酷でなんと優しい物語だったのでしょう。
この中には、人間の感情の闇と光がありありと浮かび上がっていました。
今、私はただただその余韻に浸りたい。
願わくば、狭い部屋の窓辺で、パイプ椅子に体育座りしながら、この本を手に……