野村美月・著、竹岡美穂・イラスト、ファミ通文庫。
9月22日(月)開始、9月30日(火)完了。
1日1冊ペースで思い立って再読しました。
今月のノルマは未達になりましたが、それでも、やってよかったなぁ、と思います。
“文学少女”が何を感じながら、心葉の側にあったのか。
それによって、心葉が何を感じていたのか。
一読では中々深みまで読み解けなかったモノが、続けざまに読むことでしっかりと読み取ることが出来ました。
本当に、よく考えられて丁寧に積み上げられていますね。時に、ミスディレクションを交えつつ、それも心地よい騙され方で。
又、私自身は元々ミステリばかり読んでた人間で、この作品の根底にあるミステリ的な部分に惹かれたのもあります。
でも、この作品は純然なミステリではありません。”文学少女”は”推理”はしないのです。彼女がするのは飽くまで”想像”とされています。「~とわたしは”想像”するわ」というのが彼女の決まり文句でした。
実際、ミステリとしてはアンフェアな部分も多々あります。ですが、彼女が行うのが”想像”だからこそ、それは決して禁じ手ではないのです。想像の翼は常に空想の天へと羽ばたくことが許されているのですから。
この作品は、ライトノベルという不定形の分野の中でミステリ的な方法論を絶妙のバランスで成立させた希有な作品という側面も持つのかもしれません。再読して、一読目で漠然と感じていたモノがこうして言葉になりました。
とはいえ、そんな技巧的な部分はさておいても素敵な御華詩でした。
ここには天から降り注ぐマナのような、沢山の素敵な言葉があふれていました。
人とは決定的に違うのに人と同じフリを続ける道化の。
求めても届かない禁断の愛に飢え渇く幽霊の。
過去の過ちを繰り返さぬ為の自らの誓いに繋がれた愚者の。
輝かしい才能の為に穢れることを余儀なくされた天使の。
慟哭の中で幸いの地を求める巡礼者の。
朧な鏡花水月のごとき愛を孕んだ水妖の。
そして、狭き門をくぐり神に臨む作家の。
そんな決して幸福とはいえない悲劇的な物語のに、想像の光を当て、秘められた優しさを見いだす”文学少女”のことを。
忘れません。
ここ数年、意識的に読書量を増やしてそれなりに本は読んできたつもりです。
その中でも、このシリーズは特別心の深い部分に刻み込まれる作品となりました。
今、このとき。
この作品と出会い、再読し、深く触れられたことを本当に嬉しく思います。