暇空茜・著、KADOKAWA。
2月25日(金)読了。

ネトゲで己を知り、ゲーム製作の道に進み、そして裏切られ。
それでも折れず、己の軸をブレさせず通して勝利を得た一般人男性の物語。

ネトゲについては自身の性格的に廃人になるのが怖くて避けてきたのですが、実際にネトゲ廃人としての立ち回りは苛烈なものでありますな。
己ができることはやりきるというのは上を目指すならシンプルで確実な手段ですが、あくまで理論的にはそうという話。実際は、やりきるためにそこへ費やしたコストによって別の多くを犠牲にすることになってしまうものですが、彼はやり遂げられる境遇にあり、やり遂げてしまった、というのが彼の原体験で自我の根底にあるのでしょう。

ゲーム業界については、システム開発という近い業界に身を置くゆえに、共感する部分も色々ありますね。あまりにダメなものが使い回されていると、直したくなりますよねぇ。数年前にダメシステムの建て直しとかしたなぁ、とか。C#はサーバサイドもクライアントサイドも使えてそもそも今後メインで使いそうなので、C#が素晴らしいという方の話は共感します。まぁ、道具なので使い方次第なのですが。

裁判については、そうそう触れる機会のない、できれば触れたくないことについて、本質的な部分が描かれていて非常に興味深い。
裁判官の『心証』をいかに形作るか? ということで無茶な主張も通ってしまうことがあり、その上で、やり直しはきかない。
相手が無茶な主張を通してしまえば、状況的に「いかに相手の虚構を崩すか?」となっていく。それも、専門的な分野だと裁判官に対して客観的に説明ができないと、事実が事実と認められない。
圧勝ではなく、細かい布石が生きての勝利であり、布石がかけていたらどうなっていたか? と考えると薄ら寒い。

コンプラがコンプラするのはいたしかないことですが、それ以外は変な脚色はなく、淡々と語られていてネトゲ、ゲーム業界、裁判について、資料価値は高い作品でありますな。

てなところでハリーポッターシリーズ通しに戻ります。