葉村哲・著、七草・イラスト、 MF 文庫 J 。
9月17日(水)読了。
第四回 MF 文庫 J ライトノベル新人賞佳作賞受賞作。

孤独な少女は、街と森の境界で狼と出会う。
人語を解する狼をおそれることなく、少女はその求婚を受け入れる。
人と狼の夫婦。
それは、互いに人と狼の稜線を侵す行為でもあった。
かくして、少女と狼の世界はバランスを崩し始める……

全体的に暗い雰囲気の御華詩なんですが、暗いからこそ微かな明かりが目立つというか、そういう趣のある作品でした。
細かい部分では唐突に感じられる部分も多いのですが、そんな中にあって狼と人間の夫婦という部分がしっかり描けているのがよいですねぇ。人と狼だからこそある葛藤というか、そういったモノが自然に感じられれました。『憎しみ』という感情を軸にして世界と距離を置く視点で語られるのですが、そこここに色々と考えさせるモノがあって神話的なメタファが多用されていたようにも感じます。しかし、こんな性格で、ヒロインの名前が咲希(さき)というのは、その名前自体が痛烈な皮肉な気もします。
新鮮なモノを感じさせる作品ではありましたが、シリーズとなるのかどうか、微妙な感じもします。ただ、次回作も読んでみたいと感じさせる内容ではありました。

とまぁ、そんなところで次は『くうそうノンフィク日和』です。

この広い世界にふたりぼっち (MF文庫J)

葉村 哲
出版社:メディアファクトリー
発売日: 2008-08