七位連一・著、光崎瑠衣・イラスト、 MF 文庫 J 。
12月30日(日)読了。
第三回 MF 文庫 J ライトノベル新人賞佳作受賞作。
貧民層と富裕層がはっきりした世界。
突如『楽園の民』と呼ばれる者達がもたらした『エレメント』と呼ばれる力。
その能力の発現条件は身に埋め込まれたエレメントの『卵』の孵化。
斯くして、エレメントさえ持てばどんな貧民でも戦場で名を上げ富と栄誉を獲得できるようになった……

そんな感じの世界観の中、主人公は英雄を夢見る少年ネイブ。
だが現実は傭兵団内で一人だけ卵を孵化させて居ない足手纏い。
劣等感に苛まれつつ、それでいて努力もせず、仲間の優しさにも気づけない。
唯一の肉親である妹にはいいところを見せたいため傭兵団を率いているかのような嘘ばかり。
正直、あまり愉快な主人公では無いですが、有る意味、世相を反映した主人公でも有るなぁ、とか感じました。
「駄目駄目な主人公がとあるきっかけで目覚める」という展開が予想される内容ですが、まぁ、何というか悲惨ですねぇ。

安易な悲劇。

最近のトレンドなのかどうか解りませんが流行モノの刺激要素として持つモノを活用しては居ますが、後味の良いモノではありませんでした。
世界観や演出面ではよく出来ていたし、方向性はともかくプロットも納得いくモノで「なんでこんなのが受賞?」というような内容では決して無かったとは思うのですが、色々考えさせられる作品でした。
今の世の中、こういうのが受ける時代なのでしょうねぇ、とか思ったりも。

ネタバレを極力避けて書くと今一核心に触れられませんでしたがおそらく今年最後の読了となるこの作品は「考えさせられる」という点ではよい作品でしたとポジティブに受け止めることにします。

とまぁ、そんなところで次は『文学少女と月花を孕く水妖』です。