内山靖二郎・著、朝未・イラスト、 MF 文庫 J 。
12月7日(金)読了。
タイトルから妖怪ネタで『神様のおきにいり』を連想したんですが案の定同じ作者の作品でした。
予言の力を持つクダンという少女が、その悲しい宿命に逃れようとする御華詩、ですかね。

元々はドッペルゲンガーの情報収集の為に創られた筈が、学生達の雑談の場となった『コクバン』と呼ばれる認証式の掲示板。そこで繰り広げられる言葉のやり取りから、三人の少女とクダンの交流が描かれます。なんというか、都市伝説と認証式の掲示板のあり方をうまく使っているなぁと感じました。序盤で職業柄突っ込んでしまった部分はしっかり後半でフォローされててその辺もしっかりしていました。

中でも、二人目の杏悠(あゆ)の御華詩が印象的でした。回りに勝手に天然キャラと決め付けられ、それを演じるうちに本当の自分を強く求めるようになり、その捌け口を掲示板に見つけて…… という実際にありがちなテーマを、ドッペルゲンガーの概念を利用してうまく描かれていると思います。

全体的に派手なアクションがあったりするわけでもなく、三人の少女が抱えていた問題に『コクバン』と絡んだ形でクダンがかかわっていく、それだけの御華詩なのですが、これがいい雰囲気を持っていました。これは、『クダン』の『災厄を予言して死ぬ』という伝説の処理が活きているからでしょうねぇ。ネタバレるので書きませんが、この解釈が最初に提示されたときはなるほどなぁ、と思いました。そして、この構図は本当に切ない御華詩だけれど色々な可能性を持っていて今後も期待できそうです。そんな風に中々の良作でした。

とまぁ、そんなところで次はいよいよ最終巻『刀語 第十二話 炎刀・銃』です。