川上稔・著、メディアワークス。
1月23日(火)未明読了。
好きでやっている内に自然と野球部のレギュラーとなった高村。彼は、レギュラーの座を競い、勝負に拘る他の部員達との感性の違いを感じていた。自分は何事にも本気になれないのではないか? 部活だけでなく、高校三年になり進路も考える時期にさしかかっているにもかかわらず、どこか冷めている自分を感じていた。
そんな彼が、息抜きに通っていたゲームセンター。格闘ゲームで漫然と時間を潰した帰り、たまたま目にした最大難度のシューティングゲームのワンコイン・クリア。高村はそこに「本気」を感じた。たかがゲームに本気があるのか? そう疑問に思いつつも、彼はシューティングの世界に立ち入る。そして、苦難の末、そこから多くのことを学んでいく……

大筋としてはこんな御華詩です。実際には、野球部の仲間との意識の差による葛藤や、幼なじみとの関係などがそこに絡んできます。シューティングから学んだことを実生活に、また逆に野球から学んだことをシューティングに応用するなど、これらを密接に絡めながら語られる物語の構成は、青臭いながらも興味深いモノでした。また、彼にシューティングを教えることになるゲーマーや、その周囲の人間関係なども、しっかりと裏付けのある非常に魅力的なモノでした。

あと、少しフォロー。
今時シューティングで連射? と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、第1章のタイトルの通り、作品内の時代は20世紀末です。あの頃のシューティングには、まだフルオートは常備されてませんでした。よって、連射には十分過ぎる意味がありました。

まぁ、今のゲームでも溜め撃ちがあるタイプのゲームなんかでは押しっぱなしに出来ないんで必然的に連射が必要となったり、押しっぱなしと連射とで弾の性質が変わったり、やはり連射の重要度は下がっては居ますが不要にはなっていません。少なくとも、今日の昼休みにプレイした『虫姫さま ふたり』のレコ・アブノーマルショットでは連射は必須に思えます。通常攻撃が押しっぱなしだと高速移動になる素敵仕様ですから(;^^)

閑話休題。

とまぁ、筋立てとかタイトルに関する部分はこんなところです。

が、この作品が私の心の琴線に触れたのは、何よりも前述のような脱線をしてしまう程度には私自身がシューターだからです。つか、最近ゲーセンに大量にある格闘ゲームが難しすぎてプレイできず、シューティングゲームぐらいしかついて行けてないというのが正直なところ。

『東方紅魔郷』、『東方妖々夢』の NORMAL がノーコンティニュークリア出来る程度の腕前なので、威張れるようなものではないですが、それでも、ゼビウスなんかよりずっと前、タイトルも忘れたようなシューティングゲームからプレイし続けてるので歴だけは25年以上と長いのです。

そんな私にとっては、色々と共感する部分、逆に自分なりの考えを持っているために反感を持つ部分があったりして、そういう方向からも楽しめました。

また、脳内でゲームを再生したりもしてました。これは楽しかったですねぇ。シューティングの伝統的な演出なんかが丁寧に描写されていて、画面のイメージは本当にかなりの精度で思い浮かべることが出来る内容でした。って、それで読むのに時間掛かった面もありますが(;^^)

とは言え、別にマニア向けではありません。全体的には、シューティング初心者を対象としています。初心者でも楽しめるというか、初心者にこそ楽しめる内容になっていると思います。その辺の考慮から、シューティングに関する解説も充実しているのでシューティングの入門書的な役割も意識されているぐらいですし。

まぁ、故にある程度のシューターの観点でシビアに見てしまうと、シューティングの描写が演出面に偏っててあの独特の緊迫感がちょっと弱かったかなぁ、と思わないでもないでした。その辺は、前述の通りシューティングの空気を知らない初心者に合わせてるから致し方ないところではあるんですがね。ただ、だからこそ、多くのシューターには主人公が窮地に立っても回避方法分かってしまう罠。私も色んないいシーンを自分で先読んで台無しにしてしまいました(;^^) まぁ、主人公が採った戦略と自分の思いついた戦略とがどう異なるか? とかを楽しむのも一つの手なので、それで楽しめない訳ではないですが、焦れったくもあります。なかなかその辺は微妙なバランスを持った作品ですね。

最後に、もしもこの本読んでシューティングやってみようかなぁ、と思ったなら、今なら『虫姫さま ふたり』の ORIGINAL モードが比較的無難です。って個人的趣味入りまくりですが、システムがシンプルで分かりやすいと思います。間違えても、レトロゲームコーナーで『達人王』とかは、やっちゃ駄目です。
あと、パソコンならやっぱり『東方』シリーズでしょうねぇ。初心者から熟練者まで楽しめるように創られているので入門には最適です。

と、なんか本の話よりもシューティングの話になってしまいましたがこの辺で、次は『ナハトイェーガー』です。