上月雨音・著、東条さかな・イラスト、富士見ミステリー文庫。
7月11日(水)読了。
今回は第一部と第二部の繋ぎとして、ちょっと趣向を変えて前回の事件で入院中の『僕』の病室を舞台とした安楽椅子探偵です。
毎度のごとく鴻池キララ先輩が持ち込んだ過去と現在の事件を僕、志乃、真白、きららで検討します。
ミステリにつき事件の顛末は書きませんが、タイトル…… ギリギリですねぇ。まぁ、すぐに解るようにはなってますが。

で、それよりも少し抽象的な部分で、このシリーズ読んでて何か既視感のようなものを感じてたんですが、今回あとがきで解りました。作者のオススメが『名探偵に薔薇を』。そこから、瀬川みゆき(←数多のミステリの中でマイ・ベスト・名探偵だったりします)か! と。より正確には、『名探偵』を自身に課した彼女に向ける三橋荘一郎の視点も複合した『名探偵』という在り方の歪みのようなモノに対する苦悩に通じるモノが、「僕」の志乃に対する視点に見え隠れしていたのですね。確かに、このシリーズは事件そのものよりも事件に対してどこまでも冷静に対処できてしまう志乃の内面が一つの重大なテーマであり、側に居るにも関わらず中々わからないもののそれを少しずつ解き明かしていく大学生の僕の物語でもあるので、事件の当事者よりも探偵役の内面にスポットが当たる部分で共通点が感じられるのですな。

あと、今回はタイトルにある通り『呪い』が一つのテーマになってるわけですが、これも結局は人の心が生み出すモノ。しかも、この御華詩ではやりきれない形で生まれてきます。誰も一見間違ったことをしていなくて、それどころか世間一般にも胸を張って善行と言えることをしているにも関わらず、招かれた不幸。その辺り、安楽椅子探偵としての難しさか淡々とし過ぎていて味気ない部分もありましたが、やはり、考えさせられるモノがありました。

ここから、次から第二部。その、事件よりも大きな謎である志乃の心に迫るということで楽しみです。

とまぁ、そんなところで次は『刀語 第七話 悪刀・鐚』です。