虚淵玄・著、武内崇・イラスト、TYPE-MOON BOOKS。
2月12日(火)未明読了。
かつて、正義を目指した一人の男が居た。
揺るがぬ冷徹な判断でより多くを救うためにより少ない犠牲を辞さない。
例えそれが、愛する者であろうとも……

その優しさ故に正義という名の呪いに捕らわれた衛宮切嗣の姿を描いた始まりの物語『 Fate/Zero 』の完結編。
結末は次がある時点で知れています。そこに至る過程が説得力のある形で語られ、綺麗に繋がりました。なんというか、そこに一抹の救いがあり、絶望があります。あの、本編である『 Fate/stay night 』で繰り広げられた聖杯戦争の顛末を知る身としては、結果が分かった戦いです。これが報われこれが徒労である、それが知れています。しかし登場人物達はそんなこと知るよしも無く。そのもどかしさが時に重圧となりつつも苦痛とはならない、そんな絶妙なバランスの御華詩でした。

そのバランスを保つ上で、切嗣の物語の裏で、一組のマスターとサーヴァントの見せた絆の物語があります。
この作品は、見方によっては分不相応な形でライダーのマスターとなった見習い魔術師ウェイバー・ベルベットの成長譚とも言えるでしょう。
そして正直、これが何よりも素晴らしかったです。
結末の知れた他の争いとは違い、彼ら物語は全くの未知のモノ。
ライダーが見せたモノとマスターが魅せられたモノ。その描かれ方が美事でした。
いやはや、熱いですねぇ。これは燃える展開です。正に王道。
まぁ、これがセイバーに対する痛烈な皮肉にもなっているので本筋にも影響はあるのですが(;^^)
これがあったからこそ、全体として救われない物語を暗澹たるモノだけにしない、読み手に対する救いとなっていたように思います。

うん、これはよい二次創作でした。

そんなところで、次は『ほうかご百物語』。故あって、ここから連続で第十四回電撃小説大賞受賞作を続ける予定です。