樋口司・著、タカハル・イラスト、 MF 文庫 J 。
12月2日(火)未明読了。
第四回 MF 文庫 J ライトノベル新人賞佳作受賞作。

見た目にもショボい超能力を持っている佐々木与四郎。
どこかで聞いたような名前で弄って笑われたり、打ち分けられない能力を持つことにコンプレックスを感じて友達の出来ない中学時代を送っていた。
転機を求めて、その能力をもってテレビの奇人さんコーナーに出演するも、超能力だとは全く信じて貰えず馬鹿にされる日々に変化はなし。
そんな苦しい日々から抜け出そうと中学卒業を機に知ってる人間の誰もいない高校への入学を果たし、自己紹介で人気者になろうと画策していた。
だが、そんな思惑を吹き飛ばす爆弾発言が直前に行われてしまって……

なるほど…… 伏線の提示と回収という意味では相当強引でアンフェアな部分もあるもののそれなりに考えられた作品ですね。コンプレックスの塊である主人公の与四郎が超能力がらみでヒロインたちと日々を過ごすうちに少しばかり成長する、そんな御華詩、ですかねぇ。超能力が妙にせこくて、副作用やら暴走やら制限が大きいという基本的に「出来れば超能力なんて無くしたい」という動機付けは中々よく出来ていたと思います。色々と話を創っていけそうですねぇ。ヒロインのキャラも面白いですし。
ただ、地の文が嘘だらけという文体は味でもありますがミステリ読みには辛いモノがありました。個人的には同期受賞作で何かと賛否両論な『ミサキの一発逆転!』よりも読みづらかったです。まぁ、ネタとしては面白いと思いましたが。

あと、完全に一般的ではない超個人的な理由で、主人公に絶対的に共感できない部分がありました。それは名前に対するコンプレックス。ええ、これ書いてる私も与四郎と全く同じように、どこぞの有名人と一文字違いのそっくりな名前だったりするのです(;^^) それで幼い頃から弄られ続けたのも同じ。でも、それをネタにして「名前を覚えて貰いやすい」メリットと見て生きてきた身としては、そこのコンプレックスを強調されるのは違和感がどうしてもあります。まぁ、感じ方は人それぞれで、この点は偶然一致した部分なんで本当に特殊な感想だと思いますが(;^^)

色々マイナス面も書きましたが、楽しくなりそうな設定の作品ではあるので続きが出たら読んでみるとは思います。

とまぁ、そんなところで次は『コラボアンソロジー1 狂乱家族日記』です。

ぴにおん! (MF文庫J)

樋口 司
出版社:メディアファクトリー
発売日: 2008-11