米倉あきら・著、和遥キナ・イラスト、講談社ノ……じゃなかった、HJ文庫。
3月8日(金)読了。
第6回HJ文庫大賞奨励賞受賞作。

離島の田舎町。
せんせいにはわるいうわさがあった。
文芸部の少女達を、次々に毒牙に掛けているという。
でも、せんせいはいいせんせいだから、そんなの噓に違いない。
女子中学生、比良坂れいの視点で語られたのは、果たして真実なのか否か……

投稿時のタイトルで何かと物議を醸して居た気がしますが、読んでみればガチのミステリ、それもメタ構造を持つ所謂アンチミステリでありました。ああ、なるほど。これなら投稿時の題の方が相応しい。それでいて、この森博嗣作品を彷彿とさせる改題もまた味でありましょうか。端的に言えば、抜群に楽しめる作品でありました。だけど、故に、だからこそ人には勧めがたい。気になったら己の責任で手に取りその上で判断を下すのが吉かと思われます。少なくとも、客層を間違えてる気がしないでもない。個人的に、メフィスト系な匂いが全編に漂っているのを感じました。まぁ、どこまで本気かはともかく、中高生をミステリに引き込もうという算段もあるようなので、それなら、まぁ、確かにありですな。

取りあえず『銘探偵』という単語を聞いて「『名探偵』の誤植? それとも、こういう表記もあるの?」と首を捻る人よりは、「ああ、あのメルカトル鮎ね、確か、モルワイデ鱈とかいう兄もいたよね」と返せる人の方が楽しめるのではないかと愚考します。

ミステリにつき、構造的な触りだけしか触れられないもどかしさはありますが、引き込まれるかどん引きして本を破り捨てるかはさておいて、普段主にライトノベルを読んでいる層が敢えて読んでみると何かしら感じるものがあるとは思います。こういうのもあるのか! という風に思ってミステリ読者が増えれば、多分、作者の喜ぶのではないでしょうか。まぁ、それに共感した身なので、こんな書き方に。

総じて、久々に刺激的な読書体験でありました。

てなところで次は『ささみさん@がんばらない5』です。