伊藤計劃・著、ハヤカワ文庫。
2月6日(金)読了。
9.11で変容し、やがてサラエボで核まで使われることになるテロの脅威。
人類は、個人のあらゆる行為を監視管理することで安全を担保しようとしていた。
それでも、世界は争いに満ちていた。
貧困に喘ぐ国々で繰り返される虐殺の宴。
その首謀者を暗殺するのが、米軍の特殊部隊に所属するクラヴィス・シェパードの仕事だった。
感情を抑制され、少年兵をなぎ倒し、虐殺され折り重なる人だったモノを目にしても何も感じない。
そんな在り方を続けていた彼が、とある出会いを切っ掛けに虐殺の秘密に触れ……
夭折した作家、伊藤計劃のデビュー作。なるほど、『虐殺器官』とはよく言ったモノです。タイトルに全てが詰まった物語。物騒なのに、センチメンタルな、虐殺の物語。
テロの脅威と、管理されることに慣れた人間が抱えるであろう問題。暗殺部隊という汚れ仕事を淡々とこなす主人公の視点で語られる物語は、我々読者の心に響くモノがあります。特に、今現在の世界情勢には、嵌まるものがありますねぇ。
虐殺の真相と、その動機。ミステリとしても評価されるというのもなるほどでありました。色々な過去作品へのオマージュにも溢れているのですが、唐突に現れたあれは偶然かと思ってどう反応していいか解りませんでしたが、解説によるとやっぱりあれなようで。一種のディストピアの中にもユーモアが感じられるというか、そういうのがないとやっていられないというか、そんなことも感じました。
まぁ、ネタバレを避けて抽象的にしつつ、こんなところで。『ハーモニー』は店頭から消えてたので、また見つかったら入手して読みたいですな。
てなところで次は『女騎士さん、ジャスコ行こうよ2』です。