山本弘・著、ハヤカワ文庫。
2月29日(金)読了。

2006年に発売された単行本の文庫化作品。久々にSFらしい(=なんかしら凄そうな用語がリアルに飛び交ってる)作品を読んで、感覚が戻らずに若干ペースが遅くなったモノの、後半は夢中になって読んでました。いやはや、空想科学も楽しいですねぇ。

表題作の『シュレディンガーのチョコパフェ』は世界の崩壊とそれでも失われない何か。『奥歯のスイッチをいれろ』はタイトルから連想されるあの装置を絡めながらひとりの男の生き様。『バイオシップ・ハンター』は頻発するバイオシップによる海賊事件の意外な真相。『メデューサの呪文』は文明が衰退したと思われたインチワームの想像も付かない到達点。『まだ見ぬ冬の悲しみも』はタイムスリップのもたらすモノ。『七パーセントのテンムー』は「テンムー」と診断された恋人に不安を感じつつ辿り着いた境地。『闇からの衝動』は女流SF作家の驚くべき過去。

とまぁ、ダイジェストでそんな七編のSF短編集でしたが、どれも楽しめました。特に、『メデューサの呪文』と『七パーセントのテンムー』が良かったですねぇ。前者は『言語SF』とか語られたりしますが正にそんな感じ。多くを語るとネタバレますが、言葉をネタにした言葉を紡ぐというのをさらっと上手くやってるなぁ、と思いました。また、後者は「テンムー」という語幹と、その社会的な扱い、それに対する主人公の想いがよく出ていました。そして、これらの短編を読みながら漠然と感じていたことが解説で言葉にされていてすっきりしました。なるほど、異なる者同士もわかり合える筈、そういう思いなのですね。その辺りは非常に共感出来る部分で段々と引き込まれた大きな要因でしょうね。色々といい刺激を受けることの出来る作品でした。

とまぁ、そんなところで、次は『ゼロの使い魔13~聖国の世界扉~』です。

シュレディンガーのチョコパフェ (ハヤカワ文庫JA)

山本 弘
出版社:早川書房
発売日: 2008-01-01